犬の呼吸が苦しそうな時の原因は
こんにちは
大塚駅前どうぶつ病院 心臓メディカルクリニックの院長 堀と申します。ワンちゃんの呼吸が早い時や息が荒い場合には「もしかしたら…」と、不安になることがありますよね? 今回は犬の呼吸が苦しそうな時に、緊急性の有無を判断するポイントを解説します。
犬の呼吸が苦しそうに見える原因は?
呼吸が苦しそうになる原因には以下に示すような多様な疾患・病態が関連しています。
生理的要因
緊張やパンティング、体温調節などの生理的頻呼吸は自然と呼吸状態が元に戻るため心配はありません。
呼吸不全
一般的に苦しくなる病気としては呼吸器疾患や心不全があり、病気のために酸素を取り込めなくなっている可能性があります。緊急事態なので、早急に治療を開始する必要があります。
非呼吸不全
代謝性疾患や貧血、激しい疼痛、脳神経疾患などでは血中の酸素濃度が正常でも、呼吸が激しくなって苦しそうに見えることがあります。医学的にはこれも呼吸困難と呼びますが、治療法は原因疾患により様々なので精密検査を通して原因の解明が必要です。
呼吸が早くなる原因は上記の通りたくさんあるため、原因疾患を特定することで適切な治療を行うことができます。呼吸困難の原因と検査・治療について、詳しくはこちらをご覧ください。
犬の呼吸困難ってどんな様子ですか?
ワンちゃんの呼吸が早い場合には、緊張やパンティング、体温調節などの生理的頻呼吸のこともありますが、危険な兆候(呼吸困難)の場合もあります。
犬の呼吸困難はヒトの様に「ハー、ハー」とか、「ゼー、ゼー」という風にはみえないかもしれません。犬が息苦しい時は呼吸が速くなり、横になって眠ることができず、不安・緊張などの行動が現れます。
典型的な犬の呼吸困難は以下のような症状を示します。
- 呼吸が速く、落ち着かずソワソワしている
- 安静時呼吸数が1分間に40回以上
- 息が荒く、ふせやお座りを繰り返す
- うずくまって眠れず、頻繁に姿勢を変えている
- 首を伸ばして息をしている
- 口を開けて呼吸しており、舌の色が青っぽい
上記の症状が一つでも当てはまる場合には、急性心不全や肺炎など命に係わる危険な病気の可能性が疑われます。
⇒急いで来院すべき状態と考えられます
犬の呼吸が苦しそうに見える時の緊急性の判断
苦しくない時の特徴
- 数分以内に呼吸が元に戻る
- 安静時の呼吸数が30回/分以内
- 安静時には眠ることができる
本当に苦しい時の特徴
- 呼吸数がいつもより多い(胸の動きがいつもより早い)
- いつもより胸の動きが大きい
- ソワソワしており、姿勢を頻繁に変えている
- 上記の症状の一つでも30分以上継続している
上記の特徴に当てはまる場合には、急性心不全や肺炎など命に係わる危険な病気の可能性が疑われます。
⇒急いで来院すべき状態と考えられます。こんな時は事前に様子を携帯電話で録画して頂けると獣医師が呼吸状態を判断・鑑別する際の手掛かりになります。
直前に先行するイベントがありませんでしたか?
- トリミングに行った
- 旅行・ドライブに行った
- 来客があった
- 天気が悪かった
心臓病の持病があるワンちゃんでは、緊張したり興奮するイベントの後で心不全を発症する傾向があります。どれか一つでも上記イベントの後に呼吸が早くなっている場合には急性心不全を発症している可能性が考えられます。でも、呼吸が早くなる原因はたくさんあるため、精密検査を行い、原因疾患を特定することで適切な治療を行う必要があります。
呼吸困難の原因と検査・治療について、詳しくはこちらをご覧ください。
様子をみても良い呼吸状態とは?
- 基本的に呼吸困難を示す疾患は命に係わる病気が多いため、様子をみることはお勧めできません。
- 一過性の生理的頻呼吸と呼吸困難の違いは、前者は30分前後で自然と呼吸が落ち着きます。さらに、うずくまって眠ることができる場合には緊急性は低い可能性があります。
ワンちゃんの呼吸困難でお困りの際は、当院へ気軽にお問い合わせください。