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犬が失神した!緊急性の見分け方と動物病院に行くべきタイミング

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はじめに

犬の失神は見逃せないサイン

こんにちは。
大塚駅前どうぶつ病院 心臓メディカルクリニックの院長、堀と申します。

「うちの子が急に倒れた」「失神してしまった」──
このような状況に直面すると、飼い主さんはとても不安になりますよね。

今回は、犬の失神について、どんなときに「様子見」できるのか、どんなときに「すぐ病院に行くべき」か、その見分け方をわかりやすく解説します。

 

犬の失神とは?

典型的な症状と見分け方

失神とは、一過性の意識消失発作のことです。

医学的には、脳への血流(脳血流)が一時的に低下することで意識を失ってしまうことです。

犬の場合、突然ふらっと倒れてしまったり、一時的にぐったりする様子が見られます。

 

失神の原因は?

失神は主に心臓病や自律神経障害などによって引き起こされます。

  1. 重度な心臓病(弁膜症や心筋症など)
  2. 自律神経異常(状況失神、神経調節性失神など)
  3. 一過性の不整脈(洞停止、高度房室ブロック、洞不全症候群など)

この内、1または2では失神のきっかけとなる動作の後で発症する傾向があります。

きっかけとなる動作とは?

  • 突然の興奮
  • 排泄の後

 

犬が失神したときの典型的な特徴

突然意識を失う

全身の力が抜け、完全に横たわる

30~60秒ほどで意識が自然に回復する

これらの特徴がそろっている場合、心臓発作など循環器系の異常が疑われます。

ただし、犬の失神の原因は様々であり、正確な診断のためには精密検査が必要です。

 

失神の原因と検査・治療について

 

緊急性の見分け方・動物病院に行くべきタイミング

様子を見てもいい失神とは?

次のようなケースでは、すぐに病院へ駆け込む必要はないことが多いです。

  • 非常に頻度が低い(数ヶ月に1回程度の失神)
  • すぐに意識が回復する
  • 普段の生活に大きな支障がない

この場合、原因の特定が難しいため、まずは経過観察を行い、再発状況を見守ります。

 

精密検査が必要な失神とは?

次のような場合には、早めの精密検査をおすすめします。

  • 頻繁に発作が起こる(1週間に2~3回以上の失神発作)
  • 体調や行動に異変が見られる

 

急いで来院すべき失神とは?

基本的に失神は短時間で意識が戻るため、すぐに救急来院が必要なケースは限られています。

ただし、次のような場合はすぐに受診してください。

緊急受診すべきサイン

✅呼吸が苦しそう、もしくは止まっている

✅意識が回復しても、ぐったりして動かない

✅失神と同時にけいれんが起きている

✅何度も連続して失神している

命に関わる可能性もあるため、早急な対応が必要です。

 

失神の原因の診断法は?

失神は一過性の意識消失発作なので、多くの場合には動物病院にご来院された際には症状は消えており、一見すると正常と変わらないことがほとんどです。したがって、検査の際には意識障害を引き起こす基礎疾患の確認・除外が最優先となります。

意識障害を引き起こす基礎疾患とは?

✅ 脳のトラブル(てんかんや脳炎)

✅ 代謝性疾患(低血糖・貧血など) *特に小型犬、子犬で注意

✅ 呼吸器の病気(酸素がうまく取り込めない)

 

実施する検査内容

  • 血液・生化学検査
  • レントゲン検査
  • 心エコー図検査
  • 心電図検査(院内)
  • 血圧測定
  •  

これらの検査によって異常が見つからない場合には、一過性の不整脈か脳疾患(てんかん発作、脳腫瘍など)の可能性が挙げられます。

必要に応じて以下の検査を行います。

  • ホルター心電図検査
  • 脳のCT検査

特に、心臓病や脳疾患の早期発見が重要です。

 

まとめ:犬の失神は早めの相談が安心

✅ 犬の失神は心臓病など重大な病気のサインかもしれない
✅ 頻度が高い場合は早めに精密検査を受けましょう
✅ 呼吸異常やぐったりしている場合は緊急受診を!

「うちの子、もしかして…」
そう思ったら、迷わず動物病院へご相談ください!

 

よくある質問(FAQ)

Q1. 犬が倒れましたが、すぐに動き出しました。このまま様子を見てもいいですか?

A1. 一度だけで、その後元気であれば様子見も可能ですが、再発した場合は早めの診察をおすすめします。

 

Q2. 失神とけいれん発作はどう違うのですか?

A2. 失神は脳の血流低下による意識消失(筋肉の脱力あり)、けいれんは脳の異常な電気信号による発作(筋肉の緊張あり)です。見た目が似ていても、原因と対応が異なります。

 

Q3. 精密検査を受ける場合、何を準備すればよいですか?

A3. 

  • 普段の生活状況のメモ
  • 失神時の様子を撮影した動画(可能であれば)

これらがあると、より正確な診断に役立ちます。

 

Q4. 犬の失神はすべて心臓病が原因ですか?

A4. 医学的に厳密に分類すると、心臓以外にも自律神経や血管機能などが原因になるため、一般的には循環器系の異常が原因と捉えられます。しかし、見た目だけでは区別・診断できないので、精密検査によって正しい原因を特定することが大切です。

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Author

院長 獣医師 獣医循環器学会認定医 アジア獣医内科専門医(循環器)

Director D.V.M., Ph.D.Yasutomo HORI

プロフィール

2001年
北里大学獣医畜産学部獣医学科 卒業
2001年4月-
2005年3月
小儀動物病院 勤務
2005年
北里大学獣医畜産学部小動物第3内科 助手
2007年
北里大学獣医学部小動物第3内科 助教
日本獣医循環器学会認定医 取得
2009年
博士(獣医学)取得
2010年
北里大学獣医学部小動物第2内科 講師
2015年
北里大学獣医学部小動物第2内科 准教授
2016年
酪農学園大学伴侶動物内科学IIユニット准教授・循環器科診療科長
2020年
大塚駅前どうぶつ病院 心臓メディカルクリニック 院長
2021年
アジア獣医内科専門医(循環器) 取得

役職

  • 日本獣医循環器学会 理事(2017年~)
  • さっぽろ獣医師会 理事(2019年~2020年)
  • どうぶつ検査センター株式会社 アドバイザー(2020年~)
  • VMN コンサルタント(2020年〜)
  • 動物臨床医学会 循環器分科会企画実行委員 (2024年~)

所属学会

  • 日本獣医循環器学会

大学教員として、犬や猫の心臓病および心不全の診断・治療に関する研究に数多く携わってきました。
また、獣医師向けの各種セミナーで講師を務めるほか、獣医関連の雑誌や書籍の執筆にも精力的に取り組んでいます。
これまでの経験を活かし、飼い主様と動物に寄り添う獣医療を提供いたします。

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