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ウェアラブルデバイス(PetVoice)を使った犬猫の呼吸数の計測

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近年ではIT技術の向上により様々なアプリやデバイスが開発されていますが、その中の一つとして犬猫の活動量をモニターできるウェアラブルデバイス(PetVoice)をご存じでしょうか?

これはデバイスを首輪と同じように装着するだけで睡眠、排泄、運動量をモニターできるのですが、新機能として安静時の呼吸数が記録できるようになりました(図1)。PetVoiceについて詳細はこちらをご覧ください。

 

呼吸数モニターの必要性とジレンマ

Schoberらは、僧帽弁閉鎖不全症の犬では安静時呼吸数が40回/minを超えると、心原性肺水腫を発症する可能性のあることを報告しています[1]。つまり、ご家庭での呼吸数をモニターすることは心原性肺水腫の早期発見・治療につながるのですが、忙しい日常の中では呼吸数ってなかなか計測できないですよね。さらに、心臓病の犬猫では、一過性の生理的な呼吸促拍なのか持続的で病的な呼吸促拍なのか判断に迷うこともあります。
「呼吸数を測りましょう」と勧められても、安々とは実行できないことにジレンマを感じていました。

 

呼吸数モニターの活用法

呼吸困難の早期発見

PetVoiceは首に装着するだけなので、犬猫にストレスを与えずに呼吸数をモニターできます。装着時は専用の首輪と首の間に指が1~2本入るくらいのゆとりを確認してください(図2)。

本機の呼吸数は10~99回/分の範囲であれば実測値と誤差が少なく計測可能であり、安静時の犬猫の呼吸数はそれぞれ7-22回/minと12-26回/minでした。心臓病の犬で40回/minを超える状態が続く場合には呼吸困難を起こしている可能性があり[1]、このような場合には動物病院での診察を受けることが推奨されます。本機は安静時呼吸数を継続的にモニターできるため病的な呼吸促拍を検出しやすくなり、ご家庭での心原性肺水腫の早期発見や呼吸困難を示す疾患の検出に有用性が期待されます。

 

治療経過の判定

当院ではPetVoiceを呼吸困難症例の入院中のモニターとして活用していますが、以下に実例を紹介します。

症例の猫ちゃんは心筋症に伴う心不全によって呼吸困難を示していました。入院治療を行う際にPetVoiceを装着して呼吸モニターを行いました。入院中はスタッフが呼吸数を記録しており、幸いにも治療に反応して徐々に呼吸状態が改善していきましたが、診療時間中には頻繁に記録を残すことは困難なのが実態です。一方、PetVoiceは定期的・継続的にモニターしてくれるため治療経過とともに呼吸数の減少していく様子が一目瞭然でした(図3)。このように動物病院内では治療効果の指標としてPetVoiceの有用性を実感しています。

 

PetVoiceの注意点

  • 本機は呼吸に伴うわずかな体動の変化をモーションセンサーが感知して呼吸数を算出しているので、体動の少ない安静時の呼吸数は正確に計測できますが、安静時でなければ呼吸数の正確性は低下してしまいます。
  • 呼吸数が上昇している場合には心原性肺水腫を始めとした呼吸困難を強く疑う所見ですが、呼吸困難の原因を診断することはできません。したがって、診断ならびに治療法については動物病院で診察を受けてください。

 

追加情報

PetVoiceは2023年11月25日にテレビ東京の「全力イノベーターズ」で紹介され、当院の院長も取材を受けました。ちょこっとだけ映っています。

放送の様子はYoutubeからご覧いただけます。

 

 

 

参考文献

  1. Schober KE,Detection of Congestive Heart Failure in Dogs by Doppler Echocardiography. J Vet Intern Med 2010.

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