【心雑音に注意】子犬に多い動脈管開存症とは?手術で完治できた症例紹介
目次
はじめに:子犬の心雑音は重大なサインかも?
「うちの子、心臓の音がおかしいと言われたけど、大丈夫かな……」
そんな不安を感じたことはありませんか?
子犬の心雑音には、命にかかわる先天性の心臓病が隠れている場合があります。
今回は、*動脈管開存症(どうみゃくかんかいぞんしょう・PDA)*と診断されたポメラニアンの症例を通じて、病気の特徴や治療の流れをわかりやすく解説します。
主訴
他院で心雑音を指摘された
本例はワクチン接種時の健康診断で心雑音を指摘され、精査のために紹介来院されました。
症例
犬 (ポメラニアン)、3ヶ月齢、♂
シグナルメント
元気・食欲:異常なし
体重:1.0kg
心拍数:143回/分
呼吸数:48回/分
呼吸様式:正常
検査所見
検査でわかった異常とは?
聴診:前胸部において連続性雑音を聴取しました。
胸部X線検査(図1):軽度な心拡大(心臓が大きくなっている)が認められました。
心エコー図検査(図2)
肺動脈内の異常血流(モザイク血流)を確認
Bモード検査において、左心房の拡大は認められませんでしたが、左心室内腔は軽度に拡張していました。
その他、右心房・右心室 ならびに肺動脈の拡大は認められませんでした。カラードプラ検査では心室内の短絡や大動脈ならびに肺動脈の狭窄は認められませんでしたが、心基底部短軸断面において肺動脈分岐部から肺動脈弁に向かうモザイク血流が認められました。また、連続波ドプラー検査では収縮期ならびに拡張期を通して異常な血流が記録されました。これは動脈管という胎児期に必要な血管が閉じずに開いたままになっている証拠となります。
診断
聴診ならびに心エコー図検査から、動脈管開存症と診断しました。
動脈管開存症(PDA)とは?
胎児のときには必要だった血管(動脈管)が、生後も閉じずに残ってしまう病気です。これにより、心臓に余分な負担がかかり、放置すると心不全や突然死のリスクが高まります。詳しくはこちらのページをご覧ください。
治療
まずは内科管理から
心臓にかかる負担を減らすため、心不全治療薬を使いながら体重増加を促進しました。
(※体重が1.5kg以上になると手術の安全性が高まるため)
本例では、初診時の体重が1kg未満だったことから、体の成長を待ってから手術を行うことにしました。臨床症状はありませんでしたが、手術までの内科治療としてアラセプリル (1.50mg/kg, 1日1回)とピモベンダン (0.31mg/kg, 1日2回)を開始しました。
第53病日には体重が1.36kgにまで増加したことから、開胸下で動脈管の結紮を行いました(図3)。
手術方法:開胸下結紮術
体重が十分に増えた後、**胸を開いて動脈管を縛る手術(結紮術)**を実施しました。
手術は無事に成功し、雑音も消失しました。
経過
手術は無事に終了し、術後には肺動脈内のモザイク血流は消失していました(図4)。
手術翌日は安静にしていましたが、全身状態は良好であり合併症もみられないことから手術3日目に退院しています。
飼い主さんへのメッセージ
心雑音を指摘されたら、放置しないで
「まだ小さいから様子を見よう」と思ってしまいがちですが、先天性の心臓病は時間との勝負です。
動脈管開存症は、早期に治療すれば完治が見込める病気です。
動脈管開存症は手術で治せる!
不安に感じるかもしれませんが、きちんとした診断と適切なタイミングでの治療によって、ワンちゃんは普通の生活を取り戻すことができます。
よくある質問(FAQ)
Q. 子犬の心雑音は全部が病気ですか?
A. すべてが病気とは限りませんが、精密検査は必須です。放置すると取り返しがつかない場合もあります。
Q. 動脈管開存症の手術費用は?
A. 病院によって異なりますが、手術と入院で30〜60万円程度(※目安)が一般的です。
Q. 手術後は普通に生活できますか?
A. ほとんどのワンちゃんが術後に普通の生活を取り戻し、長生きすることができます!
まとめ:子犬の咳・心雑音に気づいたら、早めに動物病院へ
✅ 子犬の咳や心雑音は、命にかかわる病気のサインかも
✅ 動脈管開存症は早期発見・早期手術で完治が目指せます
✅ 少しでも異変を感じたら、迷わず動物病院(こちら)に相談しましょう!
※心臓病に関するご予約はネット予約ではなくお電話(03-6903-7005)にてお問合せください。