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咳が治まらない犬(症例No.4)

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症例
犬(チワワ)、12歳、避妊♀

主訴
1ヶ月くらい前から咳が増えている。他院で心臓病と診断され、内服薬を処方されたが改善しないとの主訴で来院されました。

シグナルメント
元気・食欲:異常なし
体重:2.2kg、心拍数:110回/分、呼吸数:32回/分、呼吸様式:正常

検査所見
聴診:左側心尖部でgrade 3/6の収縮期雑音が聴取されました。
胸部X線検査(図1):ラテラル像では主観的に軽度な心拡大を疑ったが、VHSは10.4であり正常範囲でした。また、肺野および気管・気管支にも顕著な異常は認められませんでした。

心エコー図検査(図2):長軸像では収縮期に左心室から左心房へ逆流する血流が認められ、僧帽弁閉鎖不全症が診断されました。しかし、左心房径ならびに左心室径はほぼ正常であり、PISA法から算出した僧帽弁逆流量も低値でした。
血液検査:ANP(141.7 pg/ml)ならびにNT-proBNP(1307 pmol/L)はいずれも軽度な上昇を示していました。CRP濃度は0.8 mg/dlであり、ほぼ正常値でした。

 

診断
本例では僧帽弁閉鎖不全症が診断されましたが、各種検査からACVIMステージB1と判断しました。ステージ分類は軽度であり心疾患が咳の原因になっているとは考えられませんでした。レントゲン検査においても明らかな呼吸器疾患はみられませんでしたが、これらの所見と咳の経過から気管支炎を疑いました。

治療
僧帽弁閉鎖不全症のステージはB1と判断しましたが、事前に処方されている内服薬で改善している可能性を考慮して継続し、当院では気管支炎治療を目的として抗生剤(ビブラマイシン)と消炎剤(プレドニゾロン、3日間)を処方しました。

経過
1週間後には咳がほぼ消失しました。現在は気管支炎治療を終了し、心臓病の内科治療のみを継続しています。

コメント
本例の様に咳を呈する犬では心臓病や呼吸器疾患の鑑別が重要となります。当院では心臓病のステージや咳の発生する状況・経過などから入念に検査を行い、気管支炎を疑いました。気管支炎は一般的に症状が軽く、炎症反応や肺野の不透過性亢進像など明らかな異常所見がみられないため見過ごされることが多い疾患です。このため1年以上の長期にわたって症状の継続している事例もあります。

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